ペコちゃん金融

英語・金融の資格試験の受験記録と金融業界の動向についてのコラムを書いています。英語資格は国連英検特A級(2019年8月)、英検1級(2018年6月、東京都上位1%)、TOEIC 990を取得済(2015年10月)。金融はCMA、CIIA、CFA Level Iに合格し、現在2021年5月のCFA Level IIの結果待ち中です。金融業界の分析についてはこれから始めるところですが、投資銀行を中心にメディアの情報を拾い、自分なりの考えをコラム形式で書いていこうと考えています。

国際公認投資アナリスト(CIIA)受験記録 ~概要~

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2020年度の国際公認投資アナリスト(CIIA)試験に合格しました。全世界で会員が今年10,000人にようやく届くか届かないかという非常にマイナーな試験なのであまり聞き覚えのない方も多いと思いますが、その分参考になるブログ上の記録なども少ないので、こちらに受験記録を記そうと思います。
 
CIIAは米国を除く主要国の証券アナリスト試験の合格者が受験する共通試験で、合格すると必要に応じて他国の証券アナリスト協会に籍を移管することもできる資格です。日本では日本証券アナリスト協会(SAAJ)が実施する証券アナリスト資格(CMA)に合格すると、次のステップとして受験することが可能となります。英国、スイス、香港等、主要金融市場の証券アナリスト協会が参加しており、米国以外で有効性を持つグローバルな資格です。なぜ米国でCIIAが有効でないかと言うと、米国では独自の証券アナリスト制度であるCFA(Chartered Financial Analyst)の普及に努めており、CIIAを通じた他の試験制度との交流は行わない方針であるからとのことです。実際、CFAの会員数は160,000人超ということで、1国の証券アナリスト協会の会員数であることを考えるとけた違いに多いことが分かります。自分も日本のCMAを受験してCIIAを取得するルートを選んだものの、それだけでは知名度も知識も不十分と考えたため、このCFAを受験することにしました。
 
とはいえ、CIIAの試験自体は非常に有意義で面白いものでした。知名度は世界的に見てもあいにく低く、日本以外ではCIIA保持者に出会ったことは2回しかないという状況ですが、さすが各国の証券アナリスト制度を統合した試験制度ということで、勉強のし甲斐のある内容でした。CMAからCIIAへの流れではなく直接CFAを受けてしまえば良かったと考えることもあるものの、英語のみで出題されるCFAを直接狙いに行くよりも、CMAからCIIAへ段階的に日本語で学んでいったプロセスは無理がなく良かったと感じています。これからCFAのLevel 1~Level 3を2年間かけて受験していくことになりますが、CMAとCIIAの下地は活きると勉強を始めながら感じています。
 
この記事ではマイナーなCIIAをよく知って頂くため、自分が受験に際して気になったポイントを概説したいと思います。
 
1. 保有のメリット
日本の証券アナリスト資格(CMA)を保有していることに対するプラスアルファは、限定的ではあるものの存在するとは思います。自分はCMAを取得後、長いブランクを経てCIIAを取得しましたが、その間会ったCIIA保有者に対しては少なからず畏敬の念を抱いていました。理由は、CMAがあれば十分なところを真摯に勉強を継続して合格していると感じられる点にあると思います。CIIAがマイナーであるが故、見栄のために受験するインセンティブが低いという点が取得者の向学心を想像させるということなのだと思います。
 
また、これもCFAほど強力なメリットとは言いにくいのですが、海外の金融専門家と同一資格を保有しているという自負を持つことができるという点があります。自分は過去2回に限定されるものの、過去にスイスとロンドンの投資家で名刺やEメールの署名欄にCIIAを記載している人を見つけたことがあります。難易度と知名度からCFAと同等とは言い難いものの、CFA保有者が持つとされる資格を保有していることの自尊心と有資格者同士の連帯感を一部ながらCIIAでも感じることができると思います。
 
2. 試験内容
CIIAは第1単位(コーポレート・ファイナンス、経済、財務分析、株式分析)、第2単位(債券分析、デリバティブ分析、ポートフォリオ・マネジメント)の2単位に分かれており、個別に合否が判定されます。両単位合格して初めてCIIAの資格が授与されますが、分野が財務系と数理系にはっきり分かれていることが自分の受験者を泣かせていると考えられます。自分は出身が数理系ではなかったため、数理系の分野だけで合格点を取らなければならない第2単位に非常に苦労しました。第1単位に合格した後第2単位で不合格となり、その後年数が経って第1単位の合格履歴が失効したという悲劇に見舞われました。結果として今年両単位の勉強を同時にできたので、知識の定着という意味では非常に良かったのですが、第2単位はまた落ちるのではないかと最後まで不安でした。
 
CMAの二次試験では全科目合計で合否が判定されるため、多少数理系の問題に疎くても合格できるトリックがあったのですが、単位を分けられてしまったことにより、できない場合は全く得点できない計算問題が多くを占める第2単位に特に苦戦することになりました。ただ、逆を返すと、CIIAを受験することでオプションや先物の計算を逃げずに勉強してできるようになり、債券数理の問題などに対する苦手意識もなくなりました。
こういった意味ではCIIAの問題構成は自分自身の金融に対する理解に大いに役立ったといえます。
 
3. 合格率
CIIAは各国の証券アナリスト試験に既に合格した受験者のみを対象とした試験であるため、国籍や規制の異なる証券アナリスト達を国際基準の元で追認するという性質があり、合格率自体は高くなっています。CMAの合格率は第1単位、第2単位とも40%以上と高いですが、CIIAはそれ以上に高く設定されています。問題が簡単な訳ではないので、合格点の設定が低いのだと思います。自分の受けた2020年3月試験の合格率は、第1単位が83.3%、第2単位が60.9%でした。過年度の合格率もばらつきはあるものの少なくとも50%は超えており、「やれば受かる」試験であるといえます。
 
 
ただ、合格率に甘んじてCMA直後に不勉強のままCIIAに突入すると、問題の傾向や解法が分からず撃沈すると思います。自分自身も仕事や大学院の勉強を言い訳にして、CIIA勉強をほとんどせずに試験に突入して失敗したことが複数回(!)ありました。今回は1月から2月までの2か月間の多くをCIIAの勉強に割いたため、ある程度の自信を持って結果を待つことができました。合格率は高いものの、なめてしまうと落ちるという試験ることは想定しておいた方が良いかもしれません。実際、2017年に実施された合格者アンケートでは50-200時間のゾーンが45%と最も多く、25%は200時間以上勉強していました。
 
 
 
以上、散文的になり恐縮ですが、CIIAを受験した経験から感じた試験の全体像を掲載しました。各単位について行った勉強法なども別途書いていきたいと思います。