ペコちゃん金融

英語・金融の資格試験の受験記録と金融業界の動向についてのコラムを書いています。英語資格は国連英検特A級(2019年8月)、英検1級(2018年6月、東京都上位1%)、TOEIC 990を取得済(2015年10月)。金融はCMA、CIIA、CFA Level Iに合格し、現在2021年5月のCFA Level IIの結果待ち中です。金融業界の分析についてはこれから始めるところですが、投資銀行を中心にメディアの情報を拾い、自分なりの考えをコラム形式で書いていこうと考えています。

CFA UK - Certificate in ESG Investing 受験記

Certificate in ESG Investing

CFA受験の一環で、英国CFA協会が実施するCertificate in ESG Investingという資格を取得しました。元々英国だけで実施されており、今年度になって国外の受験者もオンラインで受験することができるようになった比較的新しい資格です。資格試験の運用開始は2019年10月1日で、まだ2年度目のとても新しい資格です。日本人受験者もまだ少なく、情報量が限られた試験ですので、関心を持たれている皆さんの助力になればと思い、申込から受験までの経緯を書いておきます。

www.cfauk.org

1. 試験の概要

試験の構成は非常に明快で、4択の問題100問に140分の試験時間で解答し、60-70%の正答を得ることで合格となります。構成は1問1答式の問題70-80問と4-6問から成るアイテムセット4-6点となっています。計算問題は全くありません。試験のカリキュラムは9分野で構成されており、それぞれに出題の分量が決まっています。カリキュラムの構成と想定出題数は1. Introduction to ESG 4-8問、2. The ESG market 4-8問、3. Environmental factors 6-12問、4. Social factors 6-12問、5. Governance factors 6-12問、6. Engagement and stewardship 6-10問、7. ESG analysis, valuatin and integration 20-32問、8. ESG integrated portfolio construction and management 8-14問、9. Investment manadates, portfolio analysis and client reporting 4-8問となっています。試験は実地とオンラインが選択できますが、英国外の受験者は基本的にオンラインを選択することになります。

 

2. 学習時間

協会の推奨学習時間は130時間ですが、合格者の推奨学習時間は100時間で、協会も100時間で足りるとの受験者の見解を正式にウェブサイト上で公開しています。合格率は60-75%とされていますので、合格者の推奨学習時間に合わせても問題なく合格できるように思います。協会の推奨学習時間に合わせたとしても、1日平均2時間強の学習時間を2か月継続すれば到達するので、CFAの本試験に比べると学習時間は少なく済むことになります。

 

3. 教材

教材は申込と同時にシラバス、テキスト、模擬試験(Specimen Paper)が協会のウェブサイトからダウンロード可能になります。申込料は試験料込で£485で、別途紙のテキストを£40+送料£45の合計£85で購入することができます。紙のテキストはダウンロードできる電子ファイルと同一ですが、書き込みと見直しの容易さを勘案して購入しました。ダウンロードしたテキストをプリントアウトして管理する手間を勘案すると、購入しておいて良かったと感じています。あいにく教材はCFA協会の発行する資料以外には現状存在していないため、専ら協会の教材に基づいて学習することになります。

尚、カリキュラムは毎年10月1日付で更新され、更新日より少し前に次年度の教材のダウンロードが可能になります。2021年度(Edition 3)のシラバスは、2020年7月19日時点で公開されていました。2021年度以降のESG試験の運営は、英国CFA協会から米国CFA協会に移管されるとのことです。

 

4. 試験対策

試験対策に使用できる教材はCFA協会の提供するテキストとその章末問題135問(9章x15問)、模擬試験1冊(100問)の合計235問分の問題しかありませんので、テキストの通読と問題の解答を繰り返すのが唯一の対策方法となります。章末問題はテキストの理解度チェックを目的としていて試験問題とは整合していませんので、2-3回解いて9割近くの正答を得られるようになったら、テキスト本文の通読と模擬試験に集中した方が良いように思います。模擬試験は本番とほぼ同一の構成となっており、難度もかなり似せてあります。テキストの理解と章末問題の解答がある程度進んだら、本番を想定して時間を計る形で模擬試験に取り組まれると良いと思います。

自分の場合は、初回に解いた章末問題の正答率が62.2%、模擬試験の正答率が58%でした。試験の合格点が60-70%と記載されていたので焦りましたが、テキストを読み直し、章末問題と模擬試験を解き直すことで、ある程度知識が定着したことを確認できました。2回目の正答率は章末問題が82.2%、模擬試験が86%でした。模擬試験は各年度の教材に1冊付いており、2019年度のEdition 1、2020年度のEdition 2が取得できたのですが、それぞれがほとんど同じ内容で、実際に利用できる模擬試験は1冊と考えた方が良さそうです。

 

5. 試験本番

英国外の受験者はオンラインが前提のため、OnVUEという試験運営システムに登録してガイダンスに従う必要があります。CFA協会のウェブサイトとは別にOnVUEに登録を行い、試験日程を設定すると、試験で使用する予定のPCから本番のアクセスが可能かをテストするウェブサイトが案内されます。案内に従ってインターネット、マイク、カメラ等が問題なく稼働するかを事前に確認します。自宅のWiFiはそれほど強くないのですが、自室からノートPCを用いてアクセスする形で問題なくテストをクリアすることができました。試験日程は日本時間でも問題なく設定できるよう、午後早くから15分刻みで枠が提供されており、日程の設定に関する不便は全く感じませんでした。

試験当日は開始時刻の30分前にOnVUEのシステムにアクセスすることがメールで求められ、メール上のリンクを通じてシステムにログインします。ログインすると携帯電話番号を入力する画面が登場し、入力すると携帯電話にSMSで受験環境を確認するためのウェブサイトのリンクが送付されます。ログインすると自分の顔写真とID(パスポート)、PCの前後左右の写真を撮影することを求めるウェブサイトに飛び、それぞれを撮影するとPC上で次に進むことができる状態になります。次に進むと試験監督とつながり、チャットでPCを周回させて周囲に疑わしいアイテムがないかをカメラで示すよう求められます。机を完全にクリーンにし、テキスト等に加えてイヤホンや携帯電話等へのアクセスがないことが確認されます。全てがクリアされていることが確認されると、試験監督が試験開始を許可し、PC上で試験開始のアイコンを押すことが可能になります。試験開始ボタンを押すと、その時点で試験を開始することが可能になります。受験環境のチェックにそれほど時間はかかりませんので、30分前にログインしてから10分以内には試験を開始することが可能になります。

本番の試験は模擬試験と同じか若干難しいという印象でした。CFAの本試験はMock Examの方が本番より難しい印象ですが、そういった差異はESGには見られなかったため、章末問題と模擬試験で高い得点を取れるようにしておくことが重要だと感じました(協会の推奨は模擬試験で75-80%の正答率の確保)。前半は特に難しく感じ、時間も足りなくなるのではないかと焦りました。前半の50問に68分程度を消費したため、後半はかなり集中しないと間に合わないと感じましたが、後半は時間のかかるアイテムセットが前半の3点に対して2点しかなく、模擬試験と同一の1問1答問題も複数見られたことから、55分程度で解答できました。全体として15分以上残すことができたので、時間管理は結果的に特段問題ありませんでした。

試験時間が終わると試験終了の確認ボタンを押すことが求められ、押すと数秒の計算時間を経てすぐにpass/failの画面が登場しました。この時点での合否は暫定のため、Provisional Resultという形でpassが表示されました。ガイダンスにあった通り、合格の場合は全体・個別セクションの正答率は表示されないとのことで、pass以外の情報は得られませんでした。failの場合は、全体として何%合格に足りなかったか(Overall Weakness)、合格レベルに達しなかったセクションが基準に何%足りなかったか(Areas of Weakness)が示されるとのことです。Areas of WeaknessはSlight(1-5%)、Moderate(6-15%)、Severe(More than 15%)に分類され、かなり詳細に得点の水準を知ることができる仕組みになっているようです。

試験の結果は終了直後に画面に表示された後、OnVUEを運営するPearson Vueから結果を確認できるウェブサイトのリンクが掲載されたEメールを受領しました。内容は試験終了直後に受験用のスクリーンに登場したものと同様で、Provisional Result: passという通知だけが掲載されていました。今後は3営業日以内に英国CFA協会上の個人ページでProvisional Resultが確認できるようになり、21日以内にProvisionalでない正式な結果通知が郵送で届けられるとのことです。Provisional ResultからOfficial Resultへの移行においてpass/failの変更が行われることは、試験の素点に関してはなさそうです。passからfailへの変更があるとすると、録画された試験時間中の取り組み姿勢の中で怪しい動きがあったり、提出したID、受験環境の写真に不正があったりといった受験姿勢の問題に成るのではないかと思います。