ペコちゃん金融

英語・金融の資格試験の受験記録と金融業界の動向についてのコラムを書いています。英語資格は国連英検特A級(2019年8月)、英検1級(2018年6月、東京都上位1%)、TOEIC 990を取得済(2015年10月)。金融はCMA、CIIA、CFA Level Iに合格し、現在2021年5月のCFA Level IIの結果待ち中です。金融業界の分析についてはこれから始めるところですが、投資銀行を中心にメディアの情報を拾い、自分なりの考えをコラム形式で書いていこうと考えています。

国際公認投資アナリスト(CIIA)対策 ~第1単位~

CIIA学習教材|日本証券アナリスト協会

 

国際公認アナリスト(CIIA)試験の第1単位の対策方法について書きます。第1単位は経済、財務分析、コーポレート・ファイナンス、株式分析で構成されており、第2単位と違って特に複雑な計算が求められない内容となっています。銀行や証券会社の投資銀行部門等に勤務していれば馴染みの深い内容となっており、対策がしやすいと言えると思います。反対にトレーディングや商品セールスなどのマーケット部門にいる受験者は理解に少々時間を要するかもしれません。

 

解答時間は第1単位も第2単位も3時間で変わりませんが、第1単位は財務分析で個別項目の金額を計算する過程が時間を要するため、全設問を順調に進められても完了するのは3時間ギリギリになるのではないかと思います。自分の場合は時間に余裕がなく、財務分析の計算過程を示す箇所を全て飛ばし、解答となる数値だけを記載して何とか全設問の解答を時間内に収めました。解答時間を極力短縮するためにも、基本的な公式は試験時に配布される公式集「Formulae」を見なくても使えるようにしておくことが望ましいです。また、コーポレート・ファイナンスで算出する企業価値などの計算過程については、関数電卓の使用方法を過去問演習で覚えて使用されると解答時価が短縮できると思います。

 

下記に項目別の出題傾向と対策方法をご紹介します。

 

1. 経済(20%)

計算問題が出題されないことが予め決まっていますので、基本的な概念の理解ができていれば解答でき、多少論述の方向性が違っても部分点がもらえると思います。概念や作図方法を把握しておけば、ある程度の得点源にできると思います。内容はとてもベーシックで、IS-LM分析、AD-AS分析、為替レートの決定要因(購買力平価金利平価)といった根本的な概念を問う問題が多く出題されます。中央銀行が金融政策を実施した場合などに図の曲線がどのようにシフトするかといった問題を図と文で回答させる問題が多いので、論点を「要点の整理」などで把握しておくと良いと思います。CIIA受験者は全員がCMAに合格していますので、その範囲の知識で十分対応でき、それ以上の複雑な項目の理解は必要ないと思います。とはいえ、自分はCMAに合格してから随分時間が経っていましたので、「要点の整理」を繰り返し読んで何とか記憶をキャッチアップさせました。記憶が薄れている方は「要点の整理」を繰り返し読んだり、過去問を繰り返されたりすると良いと思います。

 

2. 財務分析(30%)

財務諸表の穴埋めを行う問題が頻出となっています。特にP/LとB/SからC/Fを作成する問題、企業結合(連結財務諸表の作成とのれんの計算)などが多く出ており、普段財務諸表を使われない方や、使っていてもP/LとB/Sだけを用いて仕事をしている方は復習が必要になると思います。問題が各回で大きく異なるため、具体的な対策は立てづらいですが、過去問に多数当たることで主要な解答プロセスはカバーできると思います。試験問題は広範囲にわたっていて常に初見の問題となる傾向があることから、過去問を一発で解答することは難しいと思います。無理に過去問に解答しようとせず、模範解答を読んで「こういった問題が出た場合はこう解く」といった傾向を掴んでおけば、それだけでも本番での対応力を増加させると思います。

 

3. コーポレート・ファイナンス(20%)

フリーキャッシュフローの計算、WACC(加重平均資本コスト)の計算、割引キャッシュフロー(DCF)法による企業価値の計算、NPV方式による投資案件の採否の判断などが出題されます。総合的に見れば「キャッシュフローを算出して割り引く」という作業一点を様々なツールを用いて行うだけの内容になりますので、算出に際して必要となる公式を押さえておけば、特に問題なく解答できると思います。①フリーキャッシュフローの算出方法(Terminal Valueを含む)、②割引率の算出方法(レバード/アンレバード・ベータ、CAPM、WACC)が頭に入っていれば、どのような問題が来ても問題なく解答できると思います。

 

4. 株式分析(30%)

配当割引モデル(DDM)を用いて株式の理論価格や理論的な株価収益率(PER)を計算する問題が多く出題されます。特にDDMを用いて算出した理論株価と現在の株価を比較して割安・割高を判断し、購入すべきか解答するという問題が頻出になっています。DDMを用いて理論株価を算出できることがこの項目における必須能力で、これができれば多くの問題に解答できるようになっています。当期純利益、配当性向、成長率、要求収益率といった配当割引モデルの構成要素の算出方法と論理展開方法を「要点の整理」と過去問を通じて覚えられると良いと思います。計算は非常に簡素ですので計算間違いによる失点リスクも低く、得点源にしやすいと思います。DDMの他では、残余利益やフリーキャッシュフローを用いた株価評価に関する問題も増えているようです。

 

以上が項目別の第1単位対策法です。理解を問う論述問題が多く、複雑な計算を要する問題は少ないので、計算ミスで問題を落とすことは少ない単元だと思います。「要点の整理」と過去問を用いて要点を理解し、試験で解答できるよう基本的な公式を覚え、過去問をなぞる形で計算しながら解答プロセスを追うのが良いと思います。過去問の模範解答は非常に長い論述が展開されていますが、本番の解答用紙にはそれを全て埋めるほどのスペースはありませんし、解答時間も限られていますので、要点だけ押さえて簡潔に解答できるようにしておけば良いと思います。難しい概念や数式は含まれていませんので、基本的な公式の把握とそれを用いた過去問演習を繰り返せば、高い得点を得られるようになるはずです。

 

次回は第2単位の対策法について書きます。